お読みいただきありがとうございます。
もし、このブログに初めてお越しの方は、まず下記の記事から読んでいただくことをおススメします。
この記事は筆者の体験をもとに書いていますが、日時や細かな状況など、個人を特定される恐れのある事柄にはフェイクが混ざっておりますことをご了承ください。
長い一日の始まり
3日目の朝、やはりとてつもなくまずい卵焼きを頂き、他の人よりも早めに運動の時間を終えました。
検察に送致される人は、早めに回されるそうです。
検察に行くということで自分の服に着替えようかとしていたところ、担当官の若い人が、「あなた初めてでしょ?今日は長いし、スウェットのほうがいいよ」と教えてくれました。
やがて時間がきて、番号で呼ばれました。
腰縄と手錠がされます。昨日、同部屋のおじさんから、「一日ずっと手錠だからつらいぞ」と聞かされたことが頭をよぎります。
留置場を出るとき、相棒が、「もうここに戻ってこないように祈っておいてあげるよ」と言って送り出してくれました。
裏口から外に出され、護送車に乗せられました。
近隣の警察署を回って、検察庁に向かいました。
窓の外に見える普通の景色、普通に歩いている人たち…。自分がいかに普通でないかをひしひしと感じました。
検察での取り調べ
検察につくと、檻の中に駅のホームにあるような椅子が備え付けられており、その中に入れられました。
同じような人たちが、ざっと20人くらいはいたように思います。
檻の外には、それぞれの身柄の付き添いの警察官が、ずらっと腰を下ろしています。
私の付き添いは、まだ経験が浅そうな、そしていかにも柔道をやっていそうな若い警察官でした。
私語は厳禁なので、うつむいているしかありません。(途中、態度の悪かった2人が別室に連れられて行ったりしました)
この状態で何時間も待ちます。何もすることができません。動くこともできません。手錠はずっとはめられています。トイレだけは檻の中にありますが、用を足すときも手錠は外せません。小便すら思うようにできない…。ここでの自由のなさ、惨めさは、経験したことのないほどの苦痛でした。
一人ずつ順に呼ばれていくのですが、私の番が来る前に、昼食が配られました。
前日に相棒が、「明日のお昼は〇〇味のパンとコーヒー飲料」と予言していたその通り、ドンピシャの昼食が配られました。ちょっと感心しました。
食事の時だけは、利き手のほうだけ手錠を外してくれます。
依然として食欲が全くわかない中、パンにちょいちょいかじりついていると、唐突に呼ばれました。
食事の時間はあとで再度確保してくれるということで、検察官のところまで連れていかれました。
検察官に聞かれたことは、警察で聞かれたことと同じです。覚えている限りのことを正直にお話しし、10分もかからずに終わったと思います。
その後は、また檻の中に入れられて、パンを食べる時間をもらったあとは、ひたすらうつむいているだけです。
またもや数時間の待ち時間です。逮捕された人ばかりが集められ、何ともいえない暗澹たる雰囲気の中、ひたすらじっとしていることの辛さ、あそこにはもう二度と戻りたくはありません。
やがて、これから移動というアナウンスがあり、再び護送車に乗せられました。
外に出ると空は薄暗く、雨が降り出していました。嫌な予感しかしませんでした。裁判所での勾留質問
裁判所に到着すると、再び檻の中に入れられました。
場所が変わっただけで、状況的にはほとんど変わりません。
檻の中には、これから行われる手続きがどのようなものであるのかとか、あなたには弁護人を選任する権利がありますといったことが掲示されています。
暇すぎて、何度も読み返しました。
ここでも、順番に呼ばれていきます。一時間以上は待ったでしょうか、私の番が回ってきました。
勾留質問では、検察官が裁判所に対して勾留を延長する請求をしてきたことに対して、裁判官が被疑者に直接話を聞いたうえで、延長を認めるか、却下して釈放するかを決めます。
ここで勾留の延長が認められると、まずは10日間、さらに延長となると、+10日間で合計20日間勾留されてしまいます。
勾留質問のときには、手錠や腰縄などがいったんすべて外されます。ここが司法の場であるということを、妙に実感させられました。
裁判官の前に座らされると、検察の時と同様に罪状に間違いがないかを聞かれました。
その後、裁判官から「弁護士がこちらにいろいろと働きかけをしてきているので、その内容を見させてもらったうえで、こちらも判断しようと思っています。」と伝えられました。
弁護士さんがきちんと動いてくれていることがわかり、少し安心しました。
最後に「こんなバカなことをして、もちろん反省していますよね?もう二度としないと誓えますよね?」と聞かれました。
その言葉を聞いた瞬間、ほんとにバカなことをした、なんてバカなんだろうと恥ずかしい思いでいっぱいになりました。
「反省しています」と少し震え気味に絞り出すのが精いっぱいで、気を緩めたら涙がこぼれそうでした。
裁判官との話が終わると、再び手錠と腰縄をされます。(やはり私の付き添いは新人さんだったのか、手錠の向きを反対につけられたり、腰縄の結び方がわからずに他の人に助けを求めたりしていて、内心がんばれ~と思っていました)
檻の中に戻されてしばらくすると、他の人に先立って、私と他2名が呼ばれました。
移動するとのことで、また護送車に乗せられました。
妻との再会
連れてこられた場所は、検察庁でした。
私一人が降ろされ、再びあの悪夢のような檻の中に入れられました。
朝に来た時と違うのは、私一人が入れられているということです。
なんとなく、朝座った場所とは違う場所に座って、ここでも一時間以上待っていたでしょうか。
取り調べを担当している警察官が来て、私に紙を見せました。
そこには、勾留請求が棄却されたこと、そして私が釈放されることが書いてありました。
そしてその場で手錠と腰縄を外してくれました。
ようやく家に帰れる…その安心感と同時にこれから待ち受ける生活のこと、家族を含めた人間関係のこと、何より妻のことが立て続けに心に突き刺さり、嬉しい苦しい、どっちとも言えない感情が去来しました。
覆面パトカーに乗せられて、警察署に向かいました。
手首には、手錠のあとがくっきり残っています。さわると少し痛みました。
警察署につくと、留置場に入る前に取り上げられていた荷物を、書類を見ながらひとつずつ確認し、借りていたスウェットを返却し、自分の服に着替えました。
妻が警察官と今後の流れについて話をしている間、少し待たされ、その後、妻と再会しました。
「申し訳ない…」
そう絞り出すのがやっとでした。
妻は「もう…」とひとこと言って、私の方に一歩近づいてハグしてくれました。
こんな私にもまだ味方がいた、すべてを失ったわけではなかった。救われた気分になりました。
外に出ると、妻の母が車で待ってくれていました。
乗り込むと「おかえり」と言ってくれました。
自由に外に出られるということが、こんなにありがたいことだったなんて。家族がいることが、こんなに幸せだったなんて。私には、もったいないほどの幸せがこんなにあったのに、気づくことができなかったなんて。気づいていたら、こんなバカなことはしなかったのかもしれません。でも、後悔しても遅いのです。私は犯罪行為を行い逮捕された、その事実を消すことはできません。
家について、私は妻と義母に頭を下げ、一生かけて返していきますと誓いました。
大人になってこんなに泣いたことがあっただろうか、と思うくらい涙が出ました。後悔の涙です。
義母が私の肩をポンポンと叩きながら、
「もういいよ、わかったよ。難しいかもしれないけど、気持ちを切り替えて、前を向いていこう」
と言ってくれました。その他にもいろんなことを言ってくれました。
今でも、その時のことを思い出すと涙が出ます。ありがたいことに、一生かけて恩返ししないといけない人が増えました。
妻にも、事件のことを含め、いろいろ聞かれ、話せることをすべて話しました。
「とにかく、何があっても、家に帰ってこないとか許さないから」
と言われました。その翌日でしたが、一発平手打ちももらいました。
こうして私は、家にいてもいい人に戻ることができました。
コメント
コメント一覧 (5)
このブログから罪と病気に向き合う努力を感じました。
盗撮について周りに話せる相手が少なく、コメントさせていただきました。
夫が盗撮をしました。
盗撮動画を見た後に、階段で盗撮をした事から、小型カメラを購入する等をしていたそうです。
実名報道はされていませんが、職場に伝わり退職し、夫の実家へ引越し、再就職しています。
離婚は今のところ考えていませんが、今後の夫の行動を見て、自分の気持ちに変化があれば、その時判断していこうと思っており、今は共に生活しています。
私にはアルコール依存症の父親がおり、専門病院への入院等を繰り返し、心も体もボロボロになりつつも、自助会等の助けをかりながら生きている姿を見てきました。
進行したり、回復したりする父親を見て、依存症は病気であると客観的に捉えている自分がいます。
その一方で、電車内で盗撮被害を受け、駅員に突き出した事があります。その時は帰宅を急いでいたので、警察へ被害届を出さなかったのですが、世の女性の為にも、繰り返される盗撮を食い止めるためにも、届ければ良かったかなと後悔したのでした。
被害者になった事のある私は、世界中の女性を敵に回した夫を許していません。
ですが、夫に対して怒りを抱くことなく、普段通りに生活しています。
しかし、普通なら気持ち悪くて一緒に生活出来ないくらい夫を嫌いになるのではないかとも思うのです。
自分の気持ちが普通じゃないような気がしていましたが、ブログを読み、同じように離婚せずにそばにいる奥様もいる事を知り、心強く思いました。
人生のやり直し、応援しています!
私の父にも夫にも己と戦いながら生きていて欲しいと願っています!
やり直し人生
が
しました
ねこ様
はじめまして。コメントありがとうございます。
頂いたコメントを私の妻にも読んでもらいました。
「一緒だ。気持ちわかる。でも、簡単には見捨てられないんだよね」と言っていました。「自分の気持ちが普通じゃない」と思われる気持ち、とてもよくわかります。もちろん離婚を選択される方もいらっしゃると思いますが、私の妻のように一緒にいることを選んでくれる人もやはりいると思いますし、ご自身の選択を信じられてもよいのではないかと思います。(もちろん、私が言えた立場ではないのですが・・・)
妻は、私自身に向けては「あなたには、私を幸せにする!というのを糧にして、これからは悪いことをせずに生きてほしい」と、今は思ってくれているようです。妻がそばにいてくれることは、本当にありがたいことなんだと思っています。
旦那様のことに加え、過去に盗撮被害に遭われたとのこと、理不尽な思いをされたことと思います。「世界中の女性を敵に回した」とのお言葉、私の胸にも突き刺さりました。自分自身が犯した犯罪が女性をどういう気持ちにさせるものだったのか、改めて思い知ることができました。ありがとうございます。
そして、それでも旦那様と一緒に暮らしていくという選択をされたねこ様のお気持ちが、旦那様にしっかり届いているといいなと心から思います。
私のような見ず知らずの盗撮加害者に「応援」というお言葉まで頂き、本当に嬉しいです。
旦那様のこと、そしてお父様のこと、いろいろと大変な思いをされていると思います。ですが、旦那様やお父様と寄り添って生きることが、ねこ様自身の人生の「幸せ」に繋がっていることを切に願います。
何のお力にもなれませんが、私もねこ様を応援しています!
やり直し人生
が
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部屋に入ってから数時間立って初めて話しかけてくれたのは、ちょっとヤンチャそうな若い兄ちゃんでした。見た目は少し悪そうですが気さくで明るい気のいい青年でした。(小指はありませんでしたが)彼は逮捕も初めてではないらしく、これからの流れなどを親切に色々と教えてくれました。ただ初めに「なにやったんですか?」と聞かれましたが、恥ずかしくてとても盗撮とストーカーとはいえずに嘘をついてしまいました。しかし彼を中心に同じ部屋にいた人たちと雑談が出来たのは初めてほんの少しだけ気が楽になりました。
ちなみに昼食に出されたおにぎりの不味さは一生忘れられません。私はブログ主様と違って延長が決まったので更なる絶望でしたが、ブログ主様は奥様が暖かく迎え入れてくれたのは本当によかったと思います。
やり直し人生
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やり直し人生
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